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労務問題(残業代請求、サービス残業など)を中心に扱う顧問弁護士(法律顧問)によるメモ
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本ブログでは、残業代請求について触れている裁判例を紹介しています(つづき)。

二 争点1(時間外割増賃金(残業代)の未払の有無)及び同2(消滅時効の成否)について
1 原告の時間外勤務(残業)時間数について
(一)(1)原告は、原告が平成七年一月から平成九年四月までに被告で就労した日ごとの労働時間が別紙時間外割増賃金(残業代)未払金額一覧と題する書面に記載したとおりであることを前提に時間外勤務(残業)時間数は労働時間が別紙時間外割増賃金(残業代)未払金額一覧と題する書面のとおりであると主張している。
(2)しかし、原告が被告で就労中に従事していた業務の内容(前記第三の一1)に照らせば、原告が被告との間で締結した雇用契約は、原告は被告が指示する工事現場において水道本管埋設工事及びこれに付随する工事に従事し、被告はこの労務に対し賃金を支払うというものであるから、原告が労務を提供すべき場所は被告の指示に係る各工事現場であるというべきであるところ、被告の指示に係る工事現場まではバスで行くことになっていたのである(前記第三の一2)から、被告の寮から各工事現場までの往復の時間はいわゆる通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものであり、原告の主張に係る労働時間にこの通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものが含まれていることは原告の主張から明らかであること、夜間作業の多くは午後一〇時すぎころから開始されていたのであり(前記第三の一1)、原告が派遣されていた工事現場名(前記第三の一1)からうかがわれる工事現場の所在地からすれば、被告の寮の所在地から工事現場に行くのに要する時間が三時間以上になることは考えがたいのであって、被告の寮から各工事現場まで行くのに要する時間を差し引いても少なくとも午後六時台から原告の主張に係る労働時間が始まることが頻繁に見られることはいささか不自然であるといえること、被告の寮から各工事現場までの往復の時間が通勤時間の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものである以上、これについては原則として賃金を発生させる労働時間に当たらないものというべきである(もっとも、資材置場に立ち寄った場合については単なる通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものであるということはできないが、かといって、資材置場に立ち寄ったというだけでは被告の寮から各工事現場までの往復が賃金を発生させる労働時間であるということもできない。)から、被告の寮から工事現場までの往復の時間を原告の主張に係る労働時間から差し引くべきであるところ、原告は一箇所の工事現場に派遣されていたわけではないのであり(前記第三の一1)、各工事現場ごとに被告の寮から工事現場までの往復に要する時間は異なるものと考えられるところ、被告の寮からそれぞれの工事現場までの往復の時間は本件全証拠に照らしても明らかではないこと、平成七年一月から平成九年四月までの原告の時間外勤務(残業)時間数(ただし、平成七年一月から平成八年一〇月までについては昼間作業から引き続いて行われた夜間作業に従事したことによる時間外勤務(残業)時間数は不明であるので、これを除いたその余の時間外勤務(残業)時間数)については原告又はその他の従業員の申告に基づいて被告は前記第三の二1で集計したとおりであると把握しているが、それにもかかわらず右の期間中の原告の時間外勤務(残業)時間数が本件訴訟において原告の主張するとおりであることの理由については原告からは何らの説明もないこと、以上の点を総合考慮すれば、原告の勤務状況を記したというカレンダー(〈証拠略〉)及びこれを説明する原告の陳述書〈(証拠略〉)及び本人尋問における供述を加えて考え合わせても、原告が平成七年一月から平成九年四月までに被告で就労した日ごとの労働時間が別紙時間外割増賃金(残業代)未払金額一覧と題する書面に記載したとおりであることを認めるには足りないというべきである。
 そして、(証拠略)は、仮に原告の主張する労働時間が正しいとしても、通勤時間と休憩時間は差し引くべきであることを明らかにする趣旨で被告が本件訴訟になってから作成した書面であるというのである(〈人証略〉)から、(証拠略)を考え合わせても、平成七年一月から平成九年四月までの原告の時間外労働(残業)時間数が原告の主張するとおりであると認めることはできない。
 他に平成七年一月から平成九年四月までの原告の時間外労働(残業)時間数が原告の主張するとおりであることを認めるに足りる証拠はない。
(3)ところで、被告で就労する従業員は班ごとに分かれており、所属する班の従業員の出勤状況や昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間(いわゆる残業時間)数についてはその所属する班の従業員の誰かが出勤簿と題する書面(〈証拠略〉)に毎日記載し、これを被告に提出し、被告はこれに基づいてその班に所属する従業員の出勤状況や時間外勤務(残業)時間数を記載した出勤簿と題する書面(〈証拠略〉)を作成してその班に所属する従業員の出勤状況や時間外勤務(残業)時間数を把握していたのである(前記第三の一3)から、昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の原告の時間外勤務(残業)時間数は出勤簿と題する書面(〈証拠略〉)のとおりであるというべきである。
(二)平成七年一月から同年四月まで
 前記第三の二1(一)、第三の一3によれば、平成七年一月から同年四月までの、昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間数は二〇時間であり、平成七年一月から同年四月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は少なくとも二〇時間であるというべきである。
(三)平成七年五月から同年一二月まで
 前記第三の二1(一)、第三の一3によれば、平成七年五月から同年一二月までの、昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間数は二六時間であり、平成七年五月から同年一二月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は少なくとも二六時間であるというべきである。
(四)平成八年一月から同年一〇月まで
 前記第三の二1(一)、第三の一3によれば、平成八年一月から同年一〇月までの、昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間数は三一時間であり、平成八年一月から同年一〇月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は少なくとも三一時間であるというべきである。
(五)平成八年一一月及び同年一二月
(1)前記第三の二1(一)、第三の一3によれば、平成八年一一月及び同年一二月の、昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間数は二四時間である。
(2)原告の平成八年一二月の給料支払明細書(〈証拠略〉)には時間外勤務(残業)時間数は一九時間と記載されているのに対し、出勤簿と題する書面(〈証拠略〉)の平成八年一二月分には残業時間は八時間と記載されていること、昼間作業に引き続いて夜間作業が行われた場合に夜間作業が就業規則で定められた終了時間である翌日の午前五時まで行われたとすると、時間外勤務(残業)時間数は休憩時間一時間を除くと一一時間になること(前記第三の一3)に照らせば、原告が平成八年一二月に一回だけ昼間作業から引き続いて行われた夜間作業に従事したこと、その時間外勤務(残業)時間数は一一時間であることが認められる。
(3)そうすると、平成八年一一月及び号(ママ)年一二月の原告の時間外勤務(残業)時間数は三五時間であるというべきである。
(六)平成九年一月から同年四月まで
 前記第三の二1(一)、前記第三の二1(四)(2)によれば、出勤簿と題する書面(〈証拠略〉)に記載された時間外勤務(残業)時間数は昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を除いたその余の時間外勤務(残業)時間数であるが、給料支払明細書(〈証拠略〉)に記載された時間外勤務(残業)時間数は昼間作業に引き続いて夜間作業に従事する場合の時間外勤務(残業)時間数を含めた時間外勤務(残業)時間数であるということになる。そうすると、原告の一時間当たりの時間外賃金は金三〇〇〇円である(前記第三の一3)から、平成九年一月から同年四月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は平成九年一月から同年四月までの原告の給料支払明細書(〈証拠略〉)に記載された時間外勤務(残業)時間数又は賃金台帳(〈証拠略〉)の所定時間外割増賃金(残業代)欄に記載された賃金額を金三〇〇〇円で除して得られる時間数のとおりであるということになる。
 そして、平成九年一月から同年三月までの原告の給料支払明細書(〈証拠略〉)に記載された時間外勤務(残業)時間数の合計は二六時間,原告の賃金台帳(〈証拠略〉)に記載された平成九年四月の所定時間外賃金割増賃金(残業代)は金〇円である(前記第三の一3)から、平成九年一月から同年四月までの原告の時間外勤務(残業)時間数の合計は二六時間ということになる。

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