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労務問題(残業代請求、サービス残業など)を中心に扱う顧問弁護士(法律顧問)によるメモ
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当ブログでは、残業代請求に関する裁判例を紹介します(つづき)。

四 争点4(年次有給休暇相当分の支払義務の有無)について
1 平成九年一月一三日、同月二七日、同年二月一〇日、同月二〇日及び同年三月一七日の有給休暇について
(一)ア 使用者は労働基準法三九条一ないし三項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない(同条四項)が、労働者による有給休暇の請求は時季指定に係る労働日以前にされなければならないのであって、有給休暇の請求が時季指定に係る労働日以後にされた場合の有給休暇の請求とは、有給休暇の請求が事前にされなかったために当該労働者の指定に係る労働日の就労義務が消滅しておらず、したがって、当該労働日は欠勤と取り扱われたことについて、労働者が欠勤とされた日を有給休暇に振り替える措置(いわゆる年休の振替)を求めるものにすぎず、労働基準法三九条四項に規定する有給休暇の請求とは異なるものである。そして、使用者が年休の振替を認めるかどうかは使用者の裁量に委ねられているというべきである。
イ 被告では従業員から事後に有給休暇の請求があってもこれを認めない取扱いをしていたのであり、原告の平成九年一月一三日と同年二七日を有給休暇とする旨の請求は事後の請求であったこと(前記第三の一5)からすれば、被告が平成九年一月一三日と同月二七日に原告が欠勤したことについて有給休暇への振替を認めなかったことが違法であるということはできない。
ウ これに対し、原告は平成九年一月八日に佐藤修から病院に行くために有給休暇を取ることについて了解を得ていたので、現場監督らと相談の上作業に支障のない日に有給休暇を取ることにしたと主張し、その陳述書(〈証拠略〉)及び本人尋問においておおむね右の主張に沿う供述をしているが、右の主張や供述からすれば、佐藤修から了解を得たとされるときには有給休暇を取得する具体的な日にちを挙げて有給休暇の請求をしたわけではないというべきであり、したがって、仮に原告の主張するように平成九年一月八日に佐藤から了解を得たとしても、そのときに有給休暇を請求したということはできない。また、現場監督らと相談したからといって、それだけでは被告に対し有給休暇を請求したということはできない。
 したがって、原告が被告に対し平成九年一月一三日と同月二七日に有給休暇を取ることを事前に請求したということはできない。
エ 以上によれば、原告は平成九年一月一三日と同月二七日に欠勤したというべきである。
(二)原告は同年二月一〇日、同月二〇日及び同年三月一七日に病気治療のために休んで、いずれも欠勤扱いとされている(前記第三の一5)が、原告の陳述書(〈証拠略〉)及び本人尋問における供述だけでは、原告が被告に対し右の各日にちに有給休暇を取ることを事前に請求したことを認めるには足りないというべきであり、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、原告は同年二月一〇日、同月二〇日及び同年三月一七日に欠勤したというべきである。
(三)以上によれば、原告は平成九年一月一三日、同月二七日、同年二月一〇日、同月二〇日及び同年三月一七日に有給休暇を取らずに欠勤したのであるから、右の各日にちについて有給休暇であることを理由に賃金を請求することはできない。
2 退職届の提出から二週間の有給休暇について
(一)原告が退職届を提出した際の状況及び退職届を提出した後の原告の出勤の状況(前記第三の一8)に照らせば、原告は退職届の提出をもって被告に対し原、被告間の雇用契約を合意解約することを申し入れたものと認められ、被告はそれを受けて原告が退職届を提出した日に退職したものと取り扱った(前記第三の一8)というのであるから、それによって原、被告間の合意解約が成立し、原、被告間の雇用契約は平成九年五月一二日をもって終了したというべきである。
 これに対し、原告は退職届を提出する際に二週間の有給休暇を消化したいので退職する日を二週間の有給休暇が経過する日の翌日にするよう申入れたと主張し、これに沿う陳述書(〈証拠略〉)及び本人尋問における原告の供述もあるが、右の原告の供述だけでは原告の主張に係る申入れをしたことを認めることはできず、他にきれを認めるに足りる証拠はない。
(二)そうすると、原告が被告に退職届を提出した後の一四日間について有給休暇であることを理由に賃金を請求することはできない。
3 その余の有給休暇について
 原告は一日当たり金二万円と換算して右1及び2の各日にちを含む二七日分の有給休暇相当分合計金五四万円の支払を請求しているが、右1及び2の各日にちの外に有給休暇を申請したにもかかわらず欠勤扱いとされた日にちを具体的に特定しておらず、そもそもいつどのような状況で有給休暇が申請され、それにもかかわらず欠勤扱いとされたのかは一切不明であるから,その余の点について判断するまでもなく、原告の請求に係る二七日分の有給休暇から右1及び2を除いたその余について有給休暇であることを理由に賃金を請求することはできない。
4 以上によれば、原告の有給休暇相当分の金員の請求は理由がない。 


企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士契約をしている弁護士にご相談ください。また、個人の方で、相続や遺言交通事故の示談・慰謝料不当な整理解雇敷金返還請求(原状回復)ご家族逮捕などの刑事弁護士への相談が必要な刑事事件借金返済の相談などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

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