当ブログでは、
残業代請求について触れている裁判例を紹介しています(つづき)。
ウ 右イの被告の就業規則における休日に関する規定に、労働基準法三五条一項が「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。」と規定し、同条二項が「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」と規定していることも併せて考えれば、就業規則一〇条は労働基準法三五条により少なくとも週一回又は四週間を通じ四日以上は与えなければならないとされている休日について被告がその従業員に与える休日をいつにするかについて定めた規定であると解するのが相当であり、被告がその従業員に対し与える休日はあくまでも週一回又は四週間を通じ四日であるというべきである。そして、被告においては従業員は週一回又は四週間を通じ四日の休日しか与えられないとなると、被告の従業員の一週の所定労働時間数は四八時間ということになるが、被告の従業員数は原告が被告に雇用された当初は二五名、退職したときは一二名である(〈証拠略〉)から、労働基準法(平成五年法律第七五号による改正後のもの)附則一三一条一項、労働基準法第三二条一項の労働時間に係る経過措置に関する政令(平成六年一月四日政令第二号)一条二号、二条により被告の営む建設業(労働基準法八条三号)については平成六年四月一日以降の一週の法定労働時間数は週四四時間となり、一週の所定労働時間が一週の法定労働時間を上回ることになるから、被告の従業員の一週の所定労働時間数は四四時間ということになる。
ところで、一年間における一月平均所定労働時間の算出方法には、一年間の所定労働日数を算定しこれを一二で除して一か月の労働日数を算出しこれに一日の所定労働時間数を乗じて算出するという方法があり、被告の就業規則によれば、被告の従業員の一日の所定労働時間は八時間とされているから、右の算出方法に従って一月平均所定労働日数を算出することも考えられないでもないが、そのような算出方法では被告の従業員の一週の所定労働時間数が四四時間であることに抵触してしまう上、一日の所定労働時間を八時間とする就業規則の定めも労働基準法三二条二項に照らし有効であるから、一週の所定労働時間四四時間を六日で除した七時間二〇分をもって一日の所定労働時間とすることもできないから、結局のところ、一週の所定労働時間数が四四時間であることを前提に、一年間の日数を七日で除して得られた一年間の週の数に四四時間を乗じて一年間の所定労働時間数を算出し、これを一二か月で除して一月平均所定労働時間数を算出することとする。
そうすると、一年が三六五日の場合には三六五日を七日で除して得られた一年間の週の数に四四時間を乗じこれを一二か月で除して得られた
365(日)÷7(日)×44(時間)÷12(月)=16,060/84(時間)
八四分の一六〇六〇時間が被告の従業員の一月平均所定労働時間数ということになり、一年が三六六日の場合には三六六日を七日で除して得られた一年間の週の数に四四時間を乗じこれを一二か月で除して得られた
366(日)÷7(日)×44(時間)÷12(月)=16,104/84(時間)
八四分の一六一〇四時間が被告の従業員の一月平均所定労働時間数ということになる。
そして、平成七年一月から平成八年一〇月までの一か月当たりの原告の賃金は金四一万円である(前記第二の二2)から、これを右の各一月平均所定労働時間数で除して得られた金額(通常の労働時間の賃金)を二割五分増しにした
410,000(円)÷16,060/84(時間)×1.25=2,680.57(円)
410,000(円)÷16,104/84(時間)×1.25=2,673.24(円)
金二六八一円(一年が三六五日の場合)又は金二六七三円(一年が三六六日の場合)が原告の一時間当たりの割増賃金(残業代)額ということになる(なお、右の割増賃金(残業代)の端数計算に当たっては五〇銭未満は切捨て、それ以上は一円に切り上げた(昭和六三年三月一四日基発第一五〇号)。)。
(5)平成七年は年三六五日であったが、平成八年は年三六六日であったから、平成七年の原告の時間外賃金の計算においては一時間当たりの割増賃金(残業代)は金二六八一円であり、平成八年の原告の時間外賃金の計算においては一時間当たりの割増賃金(残業代)は金二六七三円であるということになるところ、平成七年一月から同年四月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は二〇時間(前記第三の二1(二))であり、同年五月から同年一二月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は二六時間(前記第三の二1(三))であり、平成八年一月から同年一〇月までの原告の時間外勤務(残業)時間数は三一時間(前記第三の二1(四))であるから、被告の未払時間外賃金は平成七年一月から同年四月までが金五万三六二〇円であり、同年五月から同年一二月までの分が金六万九七〇六円、平成八年一月から同年一〇月までの分が金八万二八六三円である。
(二)平成八年一一月から平成九年四月まで
平成八年一一月、同年一二月、平成九年一月及び同年三月の時間外勤務(残業)時間数について賃金が支払われていることは前記第三の一3から明らかであり、また、平成九年二月及び同年四月には時間外勤務(残業)がなかったことは前記第三の一3から明らかである。
(三)小括
被告の未払時間外賃金は、平成七年一月から同年四月までが金五万三六二〇円であり、同年五月から同年一二月までの分が金六万九七〇六円、平成八年一月から同年一〇月までの分が金八万二八六三円である。
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