顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問い合わせをまとめていきます。
今日は、労務問題(残業代問題、サービス残業ほか)のうち、勤務不良社員への対処を扱います。
労働契約法3条4項は、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」と規定しています。よって、勤務状態が不良な社員は、労働契約上の義務違反といえます。また、たいていの就業規則においては、勤務状態の不良は懲戒処分事由となっていますので、勤務状態が不良な社員は、懲戒処分事由に該当するともいえます。
しかし、労働契約法3条5項は、「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。」と規定し、同15条は、懲戒に関して、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と規定しています。また、同法16条は、解雇について、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 」と規定しています。
よって、処分が権利の濫用と指摘されることがないように、使用者は、当該社員に対する処分の前に適切な手順を踏む必要があります。
まず、処分の前に、事実関係を把握するとともに、その事実にもとづいて、当該社員に対して適切な指導・注意をする必要があります。
それでも当該社員の勤務状態が改善しない場合には、なんらかの措置を講ずることを検討する必要があります。
まず、人事上の措置として降格(例:部長→課長)を検討する余地があります。
これは、原則として使用者の裁量に委ねられますが、以下の事情を総合考慮して人事権の濫用と判断されるような場合は、当該降格は無効となります。
①使用者側における業務上・組織上の必要性の有無・程度
②能力・適正の欠如など労働者側における有責性の有無・程度
③労働者の受ける不利益の性質・程度
④当該企業体における昇進・降格の運用状況
次に、懲戒処分を検討する余地があります。
これには就業規則の定めが必要です。また、差別的な取り扱いは許されまん(法律上、差別的な取り扱いを禁じているものもあります。例:性別による差別など)。
それでもだめなら、最後の手段として退職勧奨・解雇を検討せざるをえません。
退職勧奨については、その手段・方法が社会通念上相当性を欠く場合には、損害賠償の対象となるので注意が必要です。もちろん、解雇においては、適正手続を経たうえで、相当性がなければなりません。これは大きなテーマなので、後日まとめます。
以上につき、不明点があれば、顧問弁護士にお尋ねください。
労働者の方でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。
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