そして，「症状固定」という概念は，医学的な概念ではなく，あくまでも後遺障害に関する判断の基準時を示すにすぎず，医学的な治療継続の必要性の有無を決定するものではないから，医師側に「症状固定」の意味が正確に理解されているかは疑問がある。

　　(2)　原告の事故後の症状及び治療経過に関して，次の事実が認められる。

　本来，医療行為に「後遺障害」という言葉はなく，「治癒するか」，「治癒しないか」のいずれかである。「後遺障害」区分の必要と目的は，障害による労働能力の喪失に対するてん補にある。

　神奈川県医師会では、医師賠償責任保険について医事紛争委員会で審議し、最終的には契約している保険会社が賠償額に応じた保険金額を決定するものの、当該保険会社は上記委員会の判断を尊重する慣行となっていたことから、原告としては、神奈川県医師会と連絡を取り合いながら、太郎の家族への賠償の方法を検討した。