顧問弁護士(法律顧問)としてよく依頼者から質問を受ける事項についてまとめていきます。
今日は、定期借家制度の概要についてです。店舗を構える依頼者からの問い合わせが多いテーマです。
<定期建物賃貸借とは>
従来型の賃貸借契約は、「正当事由」がある場合でなければ、賃貸人(貸主)から契約の更新拒絶や解約の申し入れができないこととされてきました。これに対し、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借が終了する建物賃貸借のことを定期建物賃貸借といいます。なお、契約終了後も賃借人(借主)が居住し続け、賃貸人がこれに異議を述べないような場合であっても、契約関係は確定的に終了することとなります。
<定期建物賃貸借契約の締結>
定期建物賃貸借は、内容的な要件としては期間を確定的に定めることがまず第一に必要です。この制度では、借地借家法第29条に定める1年未満の建物賃貸借を期間の定めのないものとみなす規定は適用されないこととされており、1年未満でもよいこととなっています。
定期建物賃貸借は、改正後の借地借家法第38条に規定されていますが、形式上の要件として、「公正証書による等書面によって契約する」ときに限って、定めることができるものとされています。(法第38条第1項)
この場合、貸主は借主に対して、契約の更新はなく、期間の満了とともに契約が終了することを、契約書とは別にあらかじめ書面を交付して説明しなければなりません(法第38条第2項)。
貸主がこの説明を怠ったときは、その契約は定期借家としての効力は否定され、従来型の、契約の更新のある借家契約となります。
<定期建物賃貸借契約の終了>
定期建物賃貸借契約においては、契約期間が1年以上の場合は、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間(「通知期間」といわれています。)に、借り主に契約が終了することを通知する必要があります。
なお、期間満了前に、引き続きその建物を使用することについて当事者双方が合意すれば、再契約したうえで、引き続きその建物を使用することは可能です。
<契約の中途解約>
居住用建物の定期建物賃貸借契約では、契約期間中に、借主にやむを得ない事情(転勤、療養、親族の介護など)が発生し、その住宅に住み続けることが困難となった場合には、借主から解約の申し入れができることとなっています(法第38条第5項)。この場合、解約の申し入れの日から1月経過すれば、契約が終了します。なお、この解約権が行使できるのは、床面積が200平方メートル未満の住宅に居住している借主に限られます。
<借賃の改定の特約>
定期建物賃貸借契約では、賃料の改訂に関し特約をすれば、家賃増減請求権の適用はないものとされています。
以下、参照条文です。
(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
6 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
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